The Curve
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木材の中には、割れひびや虫食い、大きなフシなど太鼓づくりに適さないものがあります。また太鼓が何十年も使われる中で壊れてしまった木片などもあります。大太鼓に使われる木材は何百年という樹齢のものも多く、太鼓になれなかったとしても他のものへと生まれ変わらせる責任が私たちにはあります。
弊社の倉庫には、太鼓になるため曲線に木取りされたものの、割れて使えない胴が保存されています。森をつくる太鼓プロジェクトを機に改めてこれを見ていた時、座面のカーブが浮かんだのです。「太鼓にはなれずとも、別のものになれるのでは?」と可能性を感じました。
木を無駄にせず、この曲線を活かした「何か」に生まれ変わらせられないだろうか?「The Curve」はここから始まっています。太鼓を仕上げるための鉋掛けの技。時代の変動で継承が難しくなりつつあるこの技を、宮本卯之助商店は大切に残しています。
曲面を美しく仕上げるこの技は、太鼓づくり以外にも活かせるのではないか。そう考え、私たちは試作に取り掛かりました。神恩感謝 日本太鼓祭【大太鼓一人打ちコンクール大会トロフィー】
試作チェア
宮本卯之助商店 代表取締役社長 宮本芳彦
専門分野はライフスタイルに関するプロダクトデザイン。デコレーションにもこだわった製作をしている。日本では各都道府県がクライアントの仕事を行い、デザインリサーチ事業も担っている。2009年からは芸術とデザインの学校で講師を務め、日本の職人やメーカーとのコラボレーションも行っている。
「The Curve」は素材です。大きさも形もさまざま。まずは浅草の工房にお越しいただき、どのような形状のものを使いたいか、作りたいものに合いそうな素材をお選びいただきます。
浅草の工房には、木工に始まり、漆、彫金、縫い職などさまざまな職人の技があります。こちらの工房を見学し、作りたいものを、どんな加工をしていくかをお話しながら決めていきます。
作るものを決めたら、職人たちが浅草の工房にて制作をし、ご納品します。
けずりしょく
主に太鼓の胴を削る作業を行う部署。太鼓の大きさ、曲線に合わせてさまざまな鉋を使い分け、丁寧に仕上げられます。それぞれに年輪の違う木目を整えながら、美しく仕上げるには経験が要ります。
はりしょく
完成した胴に皮を張る作業を行う部署。それぞれの太鼓の皮を製作し、用途に合う皮を選び、個性を見極めながら皮を張り分けます。音を確かめながら、お客さまの好みに合わせて細やかに、何代にもわたって培われた職人の経験と技で、お客さまごとにたった一つの音を創り上げます。
しあげしょく
出来あがった太鼓の最終仕上げ、獅子の制作・修理を行う部署。特に獅子は各地方によってその特性や意味合いが大きく異なるため、求められる技術や知識に多様な判断が必要となります。
もっこうしょく
木材の加工や組み立て作業を行う部署。木の種類や特徴、求められる強度や漆との相性などを考慮し、ノミと鉋を何種類も使い分け、何度も微調整を繰り返しながら確かな仕事をします。
うるしぬりしょく
漆を塗る作業をする部署。湿度がないと乾くことができない漆。漆の種類やその日の天候、気温を見極め、塗っては磨く作業を約20工程ほど繰り返し、平滑で美しく漆を塗り上げます。
みこししょく
神輿の解体、組み立て作業を行う部署。お客さまからお預かりした修理の必要な神輿を解体し、木工職、漆塗職で修理の過程を経て、戻ってきた部品の組み上げを行います。古い神輿が蘇る、木工や金工など諸職の匠の力が合わさる集大成です。
ちょうきんしょく
彫金の作業を行う部署。金属の板に模様をつけたり浮彫を施したりする彫金と、金槌や木型などを使って1枚の板を打ち延ばしながら形作る鍛金。また鋳型を使って鳳凰の胴体や蕨手を作る鋳金などの技法を使い分けます。神輿に使われる金物は大小合わせて数百点ほど。牡丹や唐草、魚子など、手作業で彫り上げ、丁寧に磨いたあと、金メッキが施されます。